あの出会いは偶然だった。
たまたま夜の学校へ忘れ物を取りに行った時、何となく学校の屋上から夜景が見てみたいと思った。
この高校は最上階が5階だけど、案外教室からの景色が綺麗だから、
きっと闇の中、輝く光はもっと綺麗なのかな、なんて出来心で。
普段は開いているはずのない屋上への扉の鍵が開いてたことが、逆に不安になったけど、
そっと足を踏み入れたら、
フェンスを越えて屋上の淵に腰掛ける女子の姿があるなんて、想像もしてなかったからとても驚いた。
「…誰?」
鈴の音が鳴ったような可憐で透き通る声が、空気を振動させて伝わる。
足音を立てたつもりはないけど気配で気づいたのか、振り向いた顔に息を呑んだ。
…若宮、沙月(ワカミヤ サツキ)…?
新月の夜の闇と同化するストレートな長い髪と真反対の月の代わりのような白い肌。
見間違えるはずがない。同じ2年C組っていうこともあるけど、
何と言っても学校1の美少女と噂されているから、の方が理由としては正しい。