「僕も月を待つなんて、最近じゃなかったな。」
「ふふっ、それって私のせい?」
「んー…、まあ沙月のおかげ。空を見上げるなんて沙月と出会うまではしてなかったし、こんなにも月が綺麗なんて知らなかったよ。」
「…嬉しい、ありがとう。」
素直な気持ちを言っただけなのに、彼女のポツリと呟いた声はすごく軽やかに色づいていた。
そっちへ視線を向ければ、嬉しそうに唇を噛みしめている姿が目に入る。
「…私と出会ったら、たくさんの迷惑をかけちゃうから…、私は誰かに悪影響しか与えない出会いしかできないんだと思ってたの。」
「…迷惑なんて思ってないよ。沙月と出会ったことに後悔もしてない。」
「…えへへ、本当、嬉しい。…でもね、一応私に何かあっても学校側には友達にも誰にも言わないってお願いしてもらってるの。」
目を伏せた沙月が、手を後ろで組んだ。
苦笑いするように微笑んでいるから、つい疑問の言葉を投げかけてしまう。
「…どうして?」
「だって、重いでしょ。大して出席してないクラスメイトが突然死んだ、なんて。だから誰かに突っ込まれても退学になったってことにしてもらう予定なの。」
「…じゃあ、松坂とかは…。」
「うん、知らないまま。…それは私が望んだことだから。私のことをそのまま静かに忘れて、みんなには前に進んでほしいから。」
沙月の言葉に、いつの間にか拳を握りしめていた。
それにハッと気づいて、手から力を抜く。
…それが、彼女の望みなら僕がとやかくいう権利はなくて。
だけど、なんだか胸が苦しくて、切なかった。


