「…僕ってなんでこんなにも平凡なんだろうね。」



「は?いきなりどうしたんだよ。」



「いや、なんか平凡な日々の繰り返しだなって思っただけ。」




ポツリと呟いただけなのに、松坂は考えるような素振りを見せる。



難しい数学の授業でも、普段から考える素振りなんて見せないから新鮮だ。




「…別に平凡って悪いことじゃねえけどな。」



「え、そうかな。特別な何かって欲しいと思わない?」



「まあ確かに特別も欲しいけど、特別ばっかりあったって仕方ないだろ。」



「…どういう意味?」




松坂の言葉の真意がよくわからなくて首をひねる。



すると今度は考える人みたいなポーズをとった。



松坂って体格が良いから、こんなことしても似合ってしまうのが悔しい。





「んー、上手く言えねえけど、“特別”がたくさんあるとするだろ?だけど、それに慣れて“特別”がありふれたものになった途端に、それって“平凡”になっちまうんじゃねえかな。」



「…つまり、特別と平凡は紙一重、ってこと?」



「んー…、まあそうなるのかね。まあ、誰かにとっての平凡でも、誰かにとっての特別で。誰かにとっての特別は、誰かにとっての平凡ってことだよ。」




たまに飛び出る松坂の名言に、目を丸くする。



だけど、言葉が素直にストンと心におりてきた。