「…ごめん、僕が臆病だったから、昨日来れなくて。沙月の大切な1日を過ぎさせちゃってごめん。」
僕の謝罪に、静かに首を横に振る。
30日のうちの1日だって、すごく貴重なはずだ。
きっと、彼女はここでさっきみたいに不安な表情をして僕を待っていたんだろう。
「…ごめん、でももう大丈夫だから。…もう絶対に逃げないよ。」
「…す、すずくん…。」
僕が微笑んでそう告げた途端、澄んだ涙が彼女の目から溢れる。
そのまま顔をくしゃっと歪めたと思ったら、隣にいた僕に抱きついた。
「…昨日ね、…す、ずくんがっ、来てくれないだけでっ、…つまらないなって…っ、私の人生が、一瞬で色あせたのっ…。」
子供みたいに泣きじゃくる沙月の声を静かに聞く。
無意識に彼女の背中に手が伸びて、そっと添えていた。
「…こんなのっ、言える立場じゃないけどっ、…すずくんがいない、人生なんて嫌だっ…。…だからっ…だから、すごく、っ嬉しいっ…。」
その言葉に僕の頰が、少しだけ緩む。
添えていた手を背中にしっかりと回して、まだ泣いている彼女を抱き寄せた。
…どうやって一緒にいればいいかなんて、わからない。
彼女がいなくなる怖さがどこまで深いかも、想像でしかわからない。
でも、君のそばにいたいって思ってしまったんだから、僕の答えに迷いはない。
…問題はたくさんあるけど、だけど君となら乗り越えていける。
そう思った。