「…後悔しませんでしたか?」
「…後悔?」
僕も再び手を動かして、パチンパチンと虚しい音がなる。
目の前の先生は、少しだけ首をかしげた。
「その人と出会ったこと。後悔、しませんでしたか?」
「んー、後悔なんて微塵もしたことないかも。ううん、出会えて良かった、って思ったことしかない。」
ハッキリそう告げた顔は真剣だった。
…先生は、すごい。
そんなに躊躇せずに答えるなんて。
「………先生、その人が死ぬって知った時、どうしようもなく怖くて、逃げたくなりませんでした?」
その反対に、僕はすごく弱いんだ。
どうしようもなく怖くて怖くて。
沙月に会うことすら、ためらってしまう。
「なったよ。」
静かに凜とした声が聞こえた。
「なったよ。本格的に実感した時、怖くて、逃げ出したくて。死ぬだなんて信じたくなくて。私達が彼女を傷つけているんじゃないかって不安で。幼馴染とも喧嘩した。」
その言葉にもまた驚いて、手を止めてしまう。
先生でも、怖くて逃げ出したいことあったんだ…。
「だけどね。彼女と向き合い、そばにいたいって気持ちの方がずっと大きかったから。短いかもしれないって思っても、彼女のそばにい続けたかった。」
…先生の言葉でバラバラだった僕の心が少しずつ集まって、1つ決意が見えてきた。


