「君のあだ名。鈴木って苗字でしょ?だから、すずくんって呼びたいなあって。ダメ?」



「ダメ?って言われても…」



「じゃあいいってことね!私のことは沙月でいいから、呼んでね?」




僕の近くで立つ彼女は思ったより小さくてすごく細かった。




だから自然と上目遣いになるんだろうけど、そんなあざとい表情でお願いされても…。




思わず口ごもると、見惚れるくらい美しく微笑んだ君が手を差し出す。




「…若宮沙月。よろしくね?すずくん。」




10人中10人が綺麗だと言うであろう彼女の手に反射的におずおずと自分のを重ねる。




その瞬間、嬉しそうに両手で僕の片手を包んでブンブンと振った。




「私、誰かと握手するの初めてっ!嬉しい!」



「そんな大げさなっ…」



「大げさなんかじゃないよ、私嘘つくのあんま好きじゃないの。」





むうっと頰を膨らました彼女がやっと僕の手を解放してくれる。




…案外強く振られたのか若干手が痺れていた。