今夜、君に月をあげる。







正直、話すか話さないかすごく迷った。




この話をしたところで誰も信じないだろうし、沙月に黙って誰かに話すのは気がひける。




だけど、“『1人で抱え込むな』”なんていう松坂の声も聞こえる。




松坂や雪花さんは沙月と近いから、逆に先生くらい適度な距離の方が話しやすいかも。




そう思うと、なんだか鳴沢先生にだけは聞いてもらいたい。



僕1人で考えるのも限界だった。



…気付いたら、言葉が溢れていた。





「…先生は、大切な人に、『もうすぐ死ぬ』って言われたらどうしますか?」




僕の質問に先生は、手を止める。



ゆっくりと僕を見た瞳は、少しだけ揺れているようにも見えた。




「…どうして、そんなこと…。」



「…少し気になって。僕は、上手い答えが分からなかったから、聞きたくて。」




そう言うと、鳴沢先生は咳払いの後、姿勢を直して僕と向き合った。



それから、寂しそうに微笑む。



「…どうもしないよ。ただ普通に過ごすの。」