「なんだか知らないけど、元気出してよー?あ、あとこれ。メロンパンあげる。私、クリーム入りのパン苦手なの知ってるでしょ?」
「…姉さんクリームパン好きだよね?」
「メロンパンのクリームは別。これ譲れないこだわりね。テスト出るよ。」
そう言ってメロンパンを差し出してくるから、素直に受け取ると満足そうに微笑んだ。
そのまま静かに扉を閉めて、リビングへと帰っていく。
僕の目の前には、美味しそうなメロンパンと1人の空間だけ。
…やっぱり、少しは食べるべきかな。
メロンパンに手を伸ばして掴む寸前で、さっきの沙月の顔を思い出して動きが止まる。
思わず手を引っ込めて、ベッドに倒れこんだ。
「僕は、何ができるんだ…。」
沙月は面倒なことだと言ったけれど、そんなことは思ってない。
だけど、沙月を助けたいと思うのに、平凡な僕には何もできないことがすごくもどかしい。
僕は、なんて言葉をかけて、どんな風に接すればいいのかすらも分からなかった。


