「若宮…、沙月…。」



「…えっ、私の名前知ってくれてるの?嬉しい、私学校来てないから知られてないと思ってたー。」



やっとのことで発した僕の言葉に彼女が喜ぶ。



聞きたい疑問はたくさんあった。




昨日は何があったのか。



なんでこんな時間に制服を着て学校に来ているのか。



君は、…何者なのか。





でも何から聞けばいいかわからなくて頭が混乱する。




「君の名前なんだっけ?昨日教えてくれたんだけど、忘れちゃった。…えっと、す、…す…末木?」


「…鈴木。」



「あ、それだ。」




眉間にシワを寄せて考えていた彼女に正解を伝えれば、ポンと手を叩いて笑う。




「鈴木かあ…、下の名前は?」




「…千里。」




「綺麗な名前だね。」




「いや、可愛らしすぎるでしょ。」





微笑んだ彼女に間髪入れずにそう言えば「そう?」なんて言葉が返ってくる。





「別にいいと思うんだけど、ほら私だって沙月じゃん?“さつき”って名前、結構男の子に捉える人多いよ?」




「そう?僕はいいと思うけど。」




「ほらやっぱり。お互いにいいと思うって言ってるんだからそれでいいってことだよ。」





廊下側の1番後ろの席に座りながら話す彼女が頬杖をついた。





それを見てから、やっと我にかえる。





そうだ、携帯を取りに来たんだった…。




驚きすぎてドアの前で動けなくなっていた足をぎこちなく動かす。




自分の机の中を見ると、お目当ての携帯はすぐに見つかった。





「…鈴木、だからすずくんね。」




「…え?」





携帯を取り出して安堵していた時に聞こえた声に振り返れば、いつの間にかすぐ近くに立っていた彼女に驚く。