「うん、死なない。だって、私死ねないから。」





彼女の言葉に一瞬だけ、ホッとする。





「だけど、…1ヶ月だけ、なんだけどね。」





そのセリフに、目の前が真っ暗になった気がした。




正確に言うと彼女の言っている意味がわからなくて、理解ができなかった。




1ヶ月…?1ヶ月ってどういうことだよ。




頭の中が色々な言葉でぐちゃぐちゃになって真っ黒になる。





そんな中を無情にも、彼女の綺麗な声が切り裂いた。





「…私、1ヶ月だけは元気なの。1ヶ月だけ。…すずくんと出会った日、覚えてる?」




「…覚えてる、よ。」



「あの日が1日目。…私ねっ、9月までしか生きられないの。それが、この1ヶ月すごく元気で “死ねない”生活をした代償なの。」





沙月が僕のほうを見たけれど、きっと僕は虚ろな目をしていただろう。




…よく、わからなかった。




いつも不思議な彼女だけど、今回ばかりはすぐに信じられるほど僕も素直ではなかった。




彼女はイタズラ好きだし、ドッキリの可能性だってある。




だけど、それを解き明かす前に「嘘でも、イタズラでもないんだ。…ごめんね。」と先手を打たれてしまった。