「…あれ、昨日も来てなかったっけ。」




松坂と別れた後、学校を訪れると鳴沢先生に当然の質問をされた。




「…ああ、まあ、はい…。携帯を忘れました…。」



「そう。はい、教室の鍵。暗いから気をつけて。」




微笑んで渡された鍵を受け取って、職員室を出る。



やっぱり鳴沢先生は美人だよな、松坂がメグちゃんと呼ぶのも頷けそうだ。




そんなことを思いながら辿り着いたドアに鍵を差し込むと、ガチャっと歪な音がした。




……あれ。まさか開いてる…?




いつもの開ける方向へ鍵が回らない。



不思議に思って鍵を抜いて手をかけると、案の定ドアが音を立てて開いた。




…なんで開いてるんだろう。




鍵は僕が今持ってるし、誰かが鍵をかけ忘れたのかなと思って教室に足を踏み入れる。




その瞬間、目に人影が飛び込んでビクッとした。




「えっ、誰っ…」




9月だからか、18時くらいと言ってもまだ日が沈んでからそんなに経っていないわけで、空の明るさと夜の暗闇で創り出された青い光が教室内に差し込んでいる。




廊下側の1番後ろの席。




僕の声に反応して突っ伏していた体勢から、ゆっくりと顔を上げた女子に言葉を失った。




…つい昨日こんな時間帯に見た美少女。




「あれ、昨日の男の子じゃん、…奇遇だね?2回も会うなんて。」




弧を描いた形のいい唇が僕に向かっての言葉を紡ぐ。