屋上の扉を開けて、透明の傘をさす。




月曜日の夜に学校に傘を持ち込んで、雨の中屋上に来るだなんておかしい光景だろう。





だけど、それをせざるを得なかった理由がある。




「…こんばんは、すずくん。」




白い傘を差した彼女が、後ろを振り向いて弱々しく微笑んだ。




雨が傘にぼたぼたと当たる音が聞こえる。




暗闇の中降る雨は、少しだけ周りの温度を下げているようだ。




涼しい風が、足元の波紋を揺らした。




「こんばんは、沙月。」



「…ごめんね、こんな雨の中来てもらって。」





沙月の言葉に首を振る。



確かに雨の時に屋上に来るのは初めてだけれど、僕はそれを選んだんだ。





衝撃の事実に気付いてしまった土曜日の夜から、どうしても気になってしまって。




色々なことに手をつけても集中できなかった。