「…ね、本当に。脅しで済めばいいんだけど…、ね。」



「そうね、…ここまで元気になれたらお母さんも安心してるでしょう?…あ、ごめんもっとお話ししたいんだけど、主人が帰ってくること忘れてたわ。じゃあ、沙月ちゃん、またねっ!お大事に!」




沙月がぎこちなく笑ったことに気づいているのかいないのか、重たい空気を僕達に残して西尾さんは去っていった。




僕は、混乱していて、何を話せばいいのかわからなくて。




下を向いていたら、沙月の嘲笑交じりの声が聞こえる。




「はぁ〜…、バレ、ちゃった…よね。もう…、何で今かなぁ〜。」



「…………沙月。」



「…なぁに、すずくん。」





意を決して目線を上げると、僕の目に弱々しい彼女が映った。




いや、僕が…、真実を仮定してしまったから、そう見えてしまうのかな。




彼女が必死に倒れそうになりながら立っているみたいに見える、なんて。





「…沙月…、僕に隠していることがある、でしょ。」




例えば、…実は喘息以外の重い病気を持っている、とか。




さすがにそこまでは声に出せなかった。




周りの声が聞こえなくて、喧騒としているはずの駅だってことも忘れてしまう。





だけど、本当に小さい声で「……うん。」と言った彼女の声だけはしっかりと聞こえていた。