今夜、君に月をあげる。







「じゃあ…、どんな話をしたい?」



「んー、すずくんの小さい頃の話が聞きたい!」



「…それ、楽しい?」



「楽しい!すっごい楽しい!」




沙月がそう言っても疑心暗鬼になりつつ、記憶を遡る。



別に僕には取り立てて話をするようなこと、ないんだけどなあ。



…昔から、ずっと平凡だったし。




「平凡で、全てにおいて平均的な子供だったかな。」



「ふふ、多分それはすずくんが思っているだけで、きっと素敵な子だったと思うけどね?」



「そうかな。あ、あと異様に車の名前を覚えるのが好きだった。」



「車の名前?」



「そうそう。高級車から一般車まで結構覚えてたらしいよ。」




あの時は母さんに『この子の記憶力すごい!』って思われてたけど、蓋を開けたら平凡だったらしい。




あれ、僕って昔の方が平凡じゃなかったのかも。