今夜、君に月をあげる。








【千里Side.】






「ねえ、すずくん。寝るのってもったいないと思わない?」



「え、先週の電車は2人とも爆睡したよね?今それ言う?」



「だから、もったいなかったなぁーって思ってるの。知ってる?人生の3分の1って睡眠らしいよ。」




黄金を放つ宝石のような月に背を向けて、電車に乗り込んだ僕に彼女がそう問いかけてきた。



確かに人生の3分の1が眠っている時間だっていうのはよく聞く話だけど…。



僕的には睡眠時間も至福の時間だから、もったいないって発想はあんまりなかったかも。





「あ。すずくん、別にそれくらいいいじゃん、って思ったでしょ?甘いっ!甘すぎるよっ!いちごみるくの飴よりも甘いっ!!」



「ふは、なんでそこで苺みるくが出てくるんだよ。」





沙月が不満そうな声で変な例えを言うから面白くなる。



僕が笑えばまたふくれっ面になるけど、その顔すらも綺麗なんだから本当にずるい。





「というわけで私はこの電車では寝ませんっ!すずくんとお話しして1分でも多く人生を謳歌します!!」



「それ僕と話すことで謳歌できるの?」



「うん、すずくんがいいのっ。」




にっこり笑った彼女に少しだけ首を傾げながらも、僕もウキウキしていることに気づく。