「ふふっ、柵に登るなんて発想、我ながら破天荒だな〜っ。」
「普通は思いつかないよ。」
「確かにそうかもっ。でも、ほら、私は登って滑っても怪我しないから。」
すずくんと同じ方向を見ていたのに、あえて後ろに向きを変える。
そのまままっすぐに前を見ると、明かりが少ない道がぼんやりと浮かんでいるだけだった。
……そう、怪我しないの。だって私は死なないから。
「…でも、やっぱりダメ。万が一があったら危ないから。」
「え〜?えへへっ、万が一なんてないよ、大丈夫。私は死なないよ。」
「違うよ、沙月は確かに体は死なないけど、…心は違うんじゃない?」
ヘラっとして言った私に、真剣な声色ですずくんが問いかけた。
…心は違う、って、なに。それ。
思わずギクッとしたような、弱い部分を突かれた気分になる。
「いつも死ぬ直前で元の場所に戻るとはいえ、絶対に怖いし苦しいし、痛いでしょ。」
「え〜…どうかな。」
「僕は沙月の心に死んでほしくないんだ。ううん、死なせたくない。」
………なんで。
なんで、すずくんはこんなにも優しくて私の弱いところまで包んじゃうのかな。
思わず涙が目に溜まってしまう。
後ろを向いていて良かった。まさか泣きそうだなんてバレたくないから。


