【沙月Side.】
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段々暗くなってきて、今では満月が空に浮かんでいる。
澄んだ空気を思いっきり深呼吸して、心を洗うふりをした。
「ねえ、すずくんっ!満月、出てきたよっ。」
私が空を指差すと、柔らかく微笑んでくれるすずくんに嬉しくなる。
…こんな私に付き合ってくれるなんて、本当にすずくんは優しい。
すずくんは後ろのベンチに座っていて、私はその少し手前にあるコスモス畑の柵に寄りかかっていた。
振り返っていた体を前に向けると、すずくんには私の表情が見えなくなる。
『月光の姫は、可愛くていい子だなんて最高だよな。鈴木も何だかんだいってすっげえ美男子だし。お似合いってこのことだぜっ。…でもな、鈴木って平凡なんだよな〜!』
ふと、食堂での松坂くんの言葉が頭に響いた。
こんなに鮮明に覚えているのは罪悪感からなのか、ただ単純に褒め言葉として受け取っているのか。
自分でもよくわからない。
昔から外にはあんまり出なかったし、他の女の子と自分の容姿を比べる機会が無いに等しかった。
テレビの芸能人を見たって、私が彼女達と比べていたのは自分の顔ではないし、そもそもの話、鏡を見るのが好きじゃなかった。
学校に行ってから、お世辞だとわかっていても、言われることは多くなったと思う。
でもそれが嬉しいのではなく、あんまりぴんとこなかった。
だって、確実に私の目の前で笑っていた雪花さんの方が女の子らしくて可愛いと思うし。
しかも、いい子…だなんて、
誰にも真実を伝えられないこんな私が、いい子なわけがない。


