そう言おうと思った途端、ぐいっと腕を引かれた。
「すずくん!青信号!」
「えっ、走るの!?歩いてても充分間に合うよ!?」
「え、走りたいの!ほら!急いで!ハリーアップ!」
走り出した彼女につられて僕も小走り程度で着いていくと、余裕たっぷりで横断歩道を渡り終わる。
後ろを振り向いて僕と目があった君は、満足そうだった。
「は〜、横断歩道走って渡るのって夢だったから、叶って良かった〜!」
「ふは、なにそれ。」
「あ、また笑う〜?真剣なのに!」
だって、女子高生が横断歩道を走って渡るのが夢だなんて言うかな?
また声に出して笑えば、ふくれっ面になった彼女もしばらくしてから笑った。
相変わらず沙月って、不思議かも。