「ふふふ。」



「…やけにご機嫌だね。」



「そりゃそうでしょ!すずくんが誘ってくれたデートだもん!」



「だから、デートというのは付き合っている男女がするものであってね…。」



「えっ、まだそんなのにこだわってるの?」




キョトンとした沙月に言葉を詰まらせる。



先週と同じように電車を降りて、ガヤガヤしたホームを2人で歩いた。




9月17日の今日は、満月の予報。沙月と一緒に出かける日。





「…沙月は僕とデートに見られて嬉しいの。」



「ん?すずくんとだったら嬉しいよ。」



「沙月って天性のモテだよね…。」




綺麗な微笑みを見せてそう言った彼女に項垂れる。



それなのに、彼氏ができたことがないだなんて本当に信じられない。




彼女ができたことない僕に謝ってほしいくらいだ。




「…私的には、すずくんの方がモテモテだと思うけどなぁ〜。」



「僕が…?モテてるわけないでしょ。」



「自分のことって案外見えないんだよっ!」




沙月がふふって楽しそうに笑うから、それは僕のセリフだよって抗議をしたかったけど、まあいいか、という気持ちになってしまった。




…相変わらず、敵わないなぁ。