今夜、君に月をあげる。






「だーからっ!褒め言葉だってば〜。」




沙月がそう言って楽しそうに軽くスキップを踏みながら、廊下を走り去る。



え、待ってあれは逃げたの?



え、逃げるって何?褒め言葉として受け取ろうとしてたけど違ったの?





「…ちょ、沙月、待てっ!」



「やっだー!待たないー!ほら、実夏ちゃんも、松坂くんも早くっ!」




僕の呼びかけに舌を小さく出して反抗した彼女に、名指しされた2人が続く。



え、ちょっと待って、これ僕追いかける雰囲気じゃない?




「廊下は走るなって、小学生の時にっ…」



「んな、堅苦しいこと言うなよ鈴木っ!」




制服姿で走る3人を後ろから見て、やれやれとため息をつく。




だけど、僕の口角が上がる気がした。




…結局こんなことでも楽しいって思うんだ。




やっぱり僕って子供っぽい。




キラキラして笑いながら走る3人に向かって僕も駆け出した。