今夜、君に月をあげる。







「── ふふっ、嬉しいなぁ。すずくんから誘ってくれるなんて。」





さっき僕が誘ったことが嬉しいのか、帰り道の最中も彼女がすごく上機嫌だ。




心なしか足取りも軽いように見える。




「…今日、楽しかった?」



「うん、松坂くんも実夏ちゃんも優しくていい人だったし、学校ってやっぱり楽しいねっ。」





ふと聞くと、満面の笑みでそう言ってくれるから、安心した。



松坂達はきっと沙月を歓迎してくれると思っていたけど、どうやら僕の予想は当たっていたみたい。




自然と口角が上がるのがわかる。





「今日は疲れたからすぐ寝ちゃいそう。曇ってるし、今日は屋上へは行けないかな。」



「…そうだね。」




朝から沙月といるからもう十分だったけど、少しだけ、ほんの少しだけ物足りない気もした。




なんて、絶対に言わないけど。




いつもの夢や幻のようなあの空間から、現実の学校の時間に現れた沙月を見ていると不思議な感覚になる。




現実に沙月が近づいたような感覚。




「明日は、学校に来る?」



「んー…、わかんない。連続で行くと、お母さんが心配しそうだから。」




「私は大丈夫なのにね。」と肩をすくめて笑った彼女に、そっかと呟いた。



今日は水曜日だから、明日休んだとしても明後日には来れるかもしれない。



そう考えるだけで嬉しくなった。