今夜、君に月をあげる。






「え…。」



大きな目を溢れそうなくらい見開いた沙月に、ハッとする。




何を言っているんだ僕は…。



沙月がそんなこと望んでいるかなんてわからないのに、言葉がポツリと口から出ていた。




無意識に首に当てていた手を下ろして、ぎゅっと握りしめる。





「やっぱりなんでもない忘れ…」



「行く!!」




僕の台詞を遮って、大声で宣言する。




今度は僕が驚いて、固まると両手を掴まれた。




あ、嫌な予感。




「すずくんから誘ってもらえるなんて嬉しい〜っ!!行く!何が何でも行く!!絶対行くからっ!!」




案の定全力で腕を振られて、目が回る。




よ、喜びが全身から伝わってくるけど、う、腕が痺れる…っ!




「…さ、沙月わかったから、手、痺れる…」



「あ、ごめんねっ。つい興奮しちゃって、えへへ。」




パッと離れた体温に少しだけ涼しさを感じながらも、彼女の喜んでいる姿に口角が上がった。




…土曜日、沙月がもっと喜んでくれそうな場所に連れていこう。




そう誓って、2人で教室を後にした。