今夜、君に月をあげる。








どうやら松坂にそんなことを求める方がバカだったみたいだ。



あのままズルズルと引きずられ、連れ込まれたカラオケの個室で松坂と向かい合う。




「…僕、歌うの苦手って前に言わなかったっけ?」



「別にお前下手じゃねえんだからいいじゃん、言うほど上手くもねえけど。」




悪気なく僕の心を抉るのやめて。



さっきまでどれほど自分の平凡さに引いてたか知ってんのか。




「大丈夫だよ、お前は平凡なのが売りなんだから!鈴木はそのままが1番いいぜ!」



「僕だって少しは特別が欲しいって思うよ。」



「まあ、強いて言うならその名前じゃね?」



「名前?鈴木って苗字のどこが…」



「じゃなくて!下の方の名前だよ!千里って案外男じゃ見かけなくて綺麗じゃねえか。」




慌てて訂正された言葉に、ああ、と納得する。



まあ確かに千里って名前は男にしては珍しいかもしれない。




「お前どっちかっていったら中性的な顔だし似合うよ。」



「嬉しくないな。」




松坂の励ましかよくわからない台詞に静かに肩を竦める。



確かに女の子みたいって小さい頃はよく言われた。



名前にしても顔にしても中性的だったから。