「── …いくよ?」



ドアが閉まっている教室の前で、後ろにいる彼女にそう声をかけると微かに頷いたのが見えた。




それを確認してから、手をかけたドアをゆっくり開けると、クラスメイトがこっちを振り向く。




「あ、鈴木くんおはようっ。」



「鈴木っっ!おっはー!待ってたぜ!!」




雪花さんと松坂が僕に気づいてこっちに近寄ってくると、僕の背中から少しだけ沙月が顔をのぞかせた。




その瞬間、松坂が「ひいぃ!」と叫んであの有名な絵のような顔になる。




「わ、わ、わ、…!?だ、え、誰っ…」




あからさまに混乱している様子の松坂と目をパチクリさせている雪花さんに、思わず沙月が吹き出した。



…ま、確かにいきなり沙月が現れたら戸惑うよな。




僕も松坂ほどじゃないけどすごく混乱したし。





「…沙月、このうるさそうなのが松坂で、こっちの女の子が雪花さん。」



「ちょ、ちょっと待てぇ鈴木!!色々突っ込みどころがありすぎて混乱してるわ!!」



「だろうね、見ればわかる。」



「ていうか、は、沙月って…まさか。」



松坂が思案顔になったと思ったら途端に、ハッとした顔を見せる。



後ろにいた沙月が恐る恐る僕の隣に来たのを見て、「まさか、月光の姫!?」と叫んだ。