「…どう、変じゃない?」
「変じゃないよ。…って、いつも夜来る時制服じゃん。」
「そうだけど、久しぶりに行くから緊張しちゃうでしょ。」
僕に両手を広げて、制服を見せた彼女に「大丈夫。」と笑えば、ホッとした笑顔が返ってくる。
昨日は火曜日だったけれど、夜に沙月が「お母さんとも相談して、明日学校に行ってみようと思うの。」と僕に言ってくれた。
でも不安だからかタクシーで駅まで行くから、そこからは一緒に行ってほしい、とのこと。
というわけで今日は、普段自転車通学の僕が家を出る時間よりもずっと早く駅に歩きで着いていた。
前も思ったけれど、こんな明るい時間に沙月を見るのって本当に新鮮だな。
「…私って、2年C組だよね。」
「うん、僕と同じ。」
「ふふっ、それは嬉しいなぁ。むしろすずくんに会いたいから学校行くって言っても過言じゃない。」
「ふは、なにそれ。」
歩きながら彼女のセリフに笑うと、「結構本気なのに。」って軽く腕を叩かれた。
だけど、すぐに顔を合わせて2人で笑う。
僕達の学校は駅から近いほうだから、歩きでもさほど苦じゃない。
なんなら沙月といるといつものペースになって、自転車の時よりもずっと学校までが早く感じる。
「…もっと長ければいいのに。」
「ん?なにが?」
「…学校までの道のりが。」
「えっ、なになに嬉しいこと言ってくれるねーっ!」
思わず呟いてしまっていた僕に、彼女がとても嬉しそうな顔をした。
どうして僕がなんとなく思ったことで、彼女がそんなに嬉しそうなのかわからないけれど。