それから少し時間が経って、校内にはこんな噂が流れ始めた。
『演劇大会が延期になった理由は、B 組の女子が紅真くんと一緒じゃないとイヤだ、とごね始めたから』
だと。
「妙な噂が流れてるもんだね」
放課後、日誌を職員室に届けに行く途中。
七ちゃんについてきてもらって、1日の仕事を終えようとしている。
「ホントだな。まぁ、アイツ遊び人っぽいしな。あり得なくはない」
「そこは否定してあげようよ」
紅真くんの立場が危うい。このままだとやってもない事擦り付けられそう、七ちゃんに。
「じゃあ、帰ろっか」
無事返し終わって、さあ帰ろうとすると、
「何であたしの言うことは1つも聞いてくれないのに、あんながさつな女の言いなりになってんの!?」
教室から、女の子のキンキンする声が聞こえてきた。
「もめてんのかな?」
「そうっぽいね」
相手の男の子は誰なんだろう。
男の子と決まったわけじゃないけど、かわいそうだな。
「仕方ねえだろ、お前の事なんかどうでもいいって言ったろ?」
(うわぁ…見事なゲス発言だ……。)
「この声、紅真じゃ…」
七ちゃんの顔が青くなっていく。
「え?」
私たちに戸惑う暇なんて、神様は与えてくれなかった。
「速水さんなんか捨てて、あたしにしなって!」
速水さんは、私たちの学年に1人しかいないはず。
七ちゃんの方に目をやると、ワナワナと今にも震えだしそうな、そんな感じだった。
「っ………」
一筋の涙を連れて、七ちゃんはこの場から逃げるように去っていった。



