「十波、ここからは一人で帰れるよな」


小さく零れた、冷たい、何も感情がこもっていない声。


「……大丈夫。帰れる」


いつもは「じゃあな」って最後に言ってくれるのに、たまに頭を撫でてくれるのに。

今日は……


「んっ……っ…」


唇、奪われた。


軽く触れるだけのキスをして、新ちゃんは何も言わず来た道を帰っていった。


ドクンドクン。ドクンドクン。心臓が耳のところでなってるみたい…。

いみ…わかんないし。


なんでキスするの?普段は人目に付きそうなところでは絶対そんなことしないのに。


考えれば考えるほど頭の中がぐるぐると新ちゃんでいっぱいになって、それ以外何も考えられなくなった。