体育館の真ん中を2人だけで歩く。


皆の鋭い視線が、私たちの間を飛び交っている。


「なにー紅真、仕事?」


「いや、七草に用があるんじゃなくって、十波」


「私っ!?」


何も、悪いことなんてしてないよね?


「あのさ、十波ちゃん。ちょっといい?」


監督の子が、人の隙間をかき分けて出てきた。


みんなのざわめきが、だんだんと大きくなる。


「なんかさ、主役のイメージがやっぱり違うんだよ。
そりゃね、あとりちゃんは演技も上手いし可愛いし、非の打ち所がないんだけど、ちょっとこの役には合ってないかなーって思うの」


あとりちゃんが目に入った。


唇を噛み締めて、俯いているだけで絵になるっていうのに。


「主役、今から変わってもらえるかな?」


なんで、私が。