「時間稼ぎって…何のこと?」


「ん、何でもなーい」


弄っていた携帯をパタンと閉じて、私の方に向き直った。


「な、何ですか」


「あんまり不器用なのも、可哀想だよ」


珍しく真剣な眼差しで、そんなことを言われたら。


「は……はい」


こういうしかないじゃないか。


「分かってんなら尚更だね。何で分かんないフリしてんのさ」


七ちゃんは、焦れったくてありゃしない、と呆れたような口調で、大袈裟に肩を竦めてみせた。



「……たしだって」



気づきたい、でも…気づきたくない。


今の関係が壊れてしまうのも怖いけど。


この甘く、でも少し苦いこの関係に、

もう少しだけ浸っていたいなんてワガママは、許してもらえますか?