聞き逃すなんて事はしなかった。


(誰だよ、『あやは』って……)


オレが聞いたことのない、恐らく誰かの名前。


「おい、十波。誰だよ『あやは』って!」


女かもしれないし、もしかしたら…。


でも、こんな時にうなされながら呼ぶ名前って、何か大事な人なんじゃないか?


「やめなって、新也。」


ドアのところから理玖が覗いていた。


「お前と姉ちゃんなんか、長い間会ってなかったんだろ?お互いに知らないこともあるじゃん」


てことは……


「理玖、知ってるのか?」


『あやは』が誰なのか。


「知ってるよ。思い出したくもないけど。最低な男だった。それでも、姉ちゃんは……」


ずっと好きだって、言い続けてた。