「あ~、カノンちゃんダメですよ。食べ過ぎっ」
その皿を、燈子がサッと取り上げた。

「あっ…」

「太りすぎって、クリニックの先生に注意されたんデショ?」

珍しく威張った様子で先輩風を吹かす燈子。

…カワイイ。


取り上げられた皿をまだ目で追いかけながらも、諦めた様子でマツコは椅子を立った。

「さて、と。

今日は午前中から健診だから…
フユちゃん、私が連れて行くね。
お姉ちゃんと一緒に幼稚園行こうね~」

「ウン♪」
「お願いしまーす」

ムスコは嬉しげに頷いた。


近頃の何気ない朝の風景。

彼女はもう、すっかりうちに馴染んでいる。

こんな様子を目にすると、この一種不思議な共生関係も悪くないと、つい感じてしまう自分がいる。


だけど……

そういうわけにもいかないんだよな。

いつかはマツコにガキが生まれて、その処遇を決する時がくるわけで…


それと同時に俺の罪は結着し、このかりそめの平和には終止符が打たれるわけだ。


今あるこの光景に目を細めながらも、最初から俺の心はどこか冷めたまま、変わらない。


ネガわくばどうか無罪放免、
彼女の姿がここから消えて、もとの生活が戻ってきますように、と。