俺がいない昼の間、どうなってるのかしらないが、フユキは妙に彼女になついている。

もともとアイツは赤ん坊の頃から女なら誰にでも愛想がいい。
もし女の誘拐犯がいたらきっとアッサリ連れ去られるだろう。

お父さんは心配だ。

このままいくと、女好きのロクでなしに育つんじゃなかろうか……
まあ、今回ばかりは助かってるが。



寝室では、トーコが先に待っていた。

近頃は俺を見るといつも、ムッと眉をしかめている。

そりゃあ、
いくら彼女が海のように心が広くても、今回の状況を気持ちよく受け入れるワケもあるまい。

俺が気まずくフトンに入ると、横にずれてはくれるものの、決まってクルッと背を向ける。

明かりを消した寝室で……
  
俺はつい不安になって、後ろからその背を抱き締める。

「…苦しいよ」

しかし彼女は拒絶しない。 

前に回した俺の拳を小さな掌でキュッと包む。


まったく。
俺はどうかしている。

こんな不機嫌な彼女が、たまらなく欲しくなるだなんて。

この夜。
俺は彼女を力ずくで振り向かせると、夢中で口付けた。

「…んっ……ダメ…だよ。
お客さん…いるの…に」

口では拒否りながらも、彼女は殆んど抵抗なく、俺を受け入れた。
いや、むしろその所作はいつもより積極的か。
自分から舌を絡めとり、より深い接合を求めているようだった。

まるで俺の欲情を煽り立てようとしてるみたいに。


こんな彼女は初めてだ。

理由はだいたい分かってる。

2人で作り上げた世界が壊れてしまう__
  
俺と同じ不安を、君も感じているからだ。