ついささくれた、意地悪な気持ちで兄に問いかけた。

「何でさ、兄ちゃんは、義姉さんを実家に返したげないの?
いくら自分が寂しいからって。
義姉さんだって、久しぶりにさ…」

二人は目を見合わせた。

「う~ん、何て言うかさ…」

兄は私のそんな気分にはまるで気づかず、優しく微笑んだ。

「出来たって判った時に、2人で話して決めたんだ。生まれる時やすぐの時、大変だって言うけど。俺、頼りないからさ。
“大変” 味わっとかないと
ちゃんとパパになれない気がするし…」

兄は義姉と両手を握り合い、目を輝かせて遠くを見つめた。

「だからこそ、2人で力を合わせて乗り切ろうって。そういう時こそ夫婦は一緒でなくちゃって、ね~」
“ね~”っと義姉が調子を合わせる。

「……一緒…」

私はフラリと歩き出した。

洗い物をしていた母親が、心配そうに振り返った。

「それに…うちには母ちゃんも父ちゃんも居てくれてるしね……って、アレ?聞いてる?トーコ?」

「…オヤスミ」