「…だからこそ……実に残念だ」
「え?」

パッチリと音をさせ、目を見開いた彼女からそっと身体を離した。

「…広報の…ヤマモト課長補佐は知ってるね?今、病気休職中の」

彼女の顔色がサッと変わる。
俺は後ろ手に手を組み、彼女の横に一歩下がった。

「あの人は、確かに女に弱くて、パソコン弱くてウダツも上がらないけど…
若い社員のフォローが上手くてな、昔から慕われてた。
俺も新入社員だった頃、1度助けてもらったことがある。
…君も、初めは彼のそういう所が気に入ったんじゃないの?」

「…⁉な、何よ急に…」
彼女の瞳がウロウロとさ迷ったのを確認し、俺は言葉を続けてゆく。

「前の人事部長も。あの人も女に弱かったな…
とにかく夫婦仲が良くってな。週末のゴルフに迎えに行っても、いっつも奥さんが出迎えてくれるんだ。
過去に色々あったなんて、全く気付かない程に」

往生際を覚ったらしく、彼女の形相がみるみるうちに冷ややかに変わった。

フンと軽蔑したように鼻を鳴らすと、下着が見えるのも構わず脚を組み、ソファに深く凭れ込む。