「……何があったかは知らんけど。
良かったな、トーコちゃん……」

寝顔に目を遣りながら、ヤツはしみじみと言った。


「でもやっぱりさ、
結婚は…もうちょっと考えてみるわ、
彼女がトーコちゃんみたいにシアワセな顔してくれたら確かに嬉しいけど…
俺はオマエみたいに気色悪くなりたくないしな」
 
「失礼な……まあ、そうか」
 
結局、熊野の迷いは晴れなかったようだ。
まあ納得いくまで悩めばいい。他人が踏み込めるコトではない。


泊まっていけと薦めたが、
「これ以上いると、吐きそうになる」

ヤツは遅くに帰っていった。

余計なひと言を残して。

『トーコちゃんに言っといて。安心したよって。不幸になってたら俺のセキニンだって、ずっと心配してたから』