「受け止めるさ、君の夫はそんなに小さい男じゃない。
俺は若い日に、飾らない君に恋をしたんだ。
ハッキリ聞かせて?飾らない君の…心を」

彼女は心持ち青い顔をしながらも、小さくうん、と頷いた。

「……わ、分かった。じゃあ言うね?
私…こないだから……アキトさんのこと」

「俺のこと?」

「アナタのことが……」

彼女の額に、細かい汗の粒が浮かんだ。
顔が真っ青だ。

「うん」


「アナタのコトが、


気持ち悪くてたまらないっ!!!!」



溜まっていた鬱屈(もの)を吐き出すように叫ぶと、彼女は脱兎の如く洗面台に向かって駆け出していった……

…………。


飾った言葉が欲しかった。


『男が泣くのは人生3度』


バリバリ体育会系の古い父親に、そういい聞かされて育った俺だったが。

その夜の俺は
一人寝の広いベッドで枕を濡らして夜を明かした。



それからも、彼女の症状はますます悪化していった。

帰宅すれば、無理して俺に抱きつこうとして、真白な顔色でトイレに駆け込む。

ヨロけながらトイレから出、申し訳なさそうに俯く燈子。

「お医者さんにも行ってみたんですけど…」

精神科に行けと一笑に付されたのだと、悲しげに彼女は睫毛を臥せた。