⑦オオカミさんと。溺れる愛の行く先に【番外編も完結】

「あーあ、あなたたちってソックリね。
極めつけのお人好し。
フユちゃんもいい子で…
本当……羨ましい……ったら…」 

宝石みたいな涙を一粒溢し、それきり彼女は下を向いてしまった。


「カノンちゃん、あの…
良かったら落ち着くまでうちに……」

燈子が言いかけたその時。


彼女の告解を黙って聞いていた花岡くんが、突如ソファから立ち上がった。

「なあ…マッちゃん、…筒賀村に帰ろ?」


ハッとして涙に濡れた顔を上げた彼女は、
しかしイヤイヤと首を振った。

「い、イヤよっ、あんなサルしかいない田舎になんか、誰がっ…!」


彼は静かに席を移動し、彼女の隣に腰掛けた。

「俺ね、それを言うためにマっちゃん探してたんだ。
マッちゃん、子供が出来たらしいって、風の噂で聞いて…
急に連絡もとれなくなった君を、オヤジさんだってどれだけ心配してたか…」

「アイツがアタシなんか、心配するわけないじゃない!
黙って村を出ていってから、もう10年も会ってないのに…」

今度は花岡くんが首を振った。