「親父、坊ちゃんが帰ってきやした。」
「そうか、中に入れろ。」
中から裕也のお父さんであろう声が聞こえた。
「失礼します。」
そう言って、中に入ると組長と夫人が座っていた。
「親父、今日は結婚の報告に来た。」
「金代組組長、金代つぼみと申します。」
「知ってると思うが、裕也の父親で南沢組組長をしている南沢幸信(ミナミサワユキノブ)だ。」
私たちは軽い挨拶をかわすと、夫人と裕也には出て行ってもらい、組長として話を始めた。
「今日は結婚のご挨拶という名目でうかがっていますが、その前に少し確認しておきたいことがあります。」
「ほう、その確認したいこととは何だ?」
「あなた、麻薬の取引をしていますね?それを若頭は知らないはずだ。」
私が静かにそう告げると、組長は少しうろたえた様子でこう答えた。
「なぜ、そのことを知っている?」
「うちの情報網をなめないでほしい。あなたのことを調べるなんて造作もないことだ。」
「だが、だからなんだというのだ。」
「その麻薬取引から手を引いてもらいたい。」
組長は不機嫌さを隠さないまま問いかけてきた。
「なぜ、あんたの言うことを聞かねばならんのだ?俺がお前のような若造の言葉を聞き入れるとでも思ったか?」
「まあそう思うのは当然です。しかしその事実を若頭が知ったらどう思うのでしょうか。若頭は正統派だと聞いています。こんなことを組長がしていると知ったらさぞお怒りになるでしょうね。」

