「しずくさんいい人だったね。」

「ああ、そうだな。」

祐也はそう言うと、家とは違う方向に向けて車を走らせた。

「祐也?家帰るんじゃないの?」

「ああ、ちょっと寄るところがな。」

それから祐也は目的地まで黙り込んでいた。

どこに行くんだろう?

それから一時間ほどで高いと有名なホテルの駐車場に着いた。

「どうして、ここに?」

「中に入ってからのお楽しみだ。」

祐也は微笑みながらそう言った。

なんだろう?

祐也は車を降りて私の手を取り、ホテル内のレストランまでエスコートしてくれた。

「いらっしゃいませ。ご予約頂いた南沢様ですね。こちらへどうぞ。」

私たちは店員に案内され、夜景が綺麗な席に付いた。

「祐也?どうしてこんなに高い所に入ったの?」

「支払いは俺持ちだから好きなだけ食べろ。」

「そう言うことじゃなくて!ここに入った理由を聞いてるの!」

「それはあとでわかる。だからそれまで静かに食え。」

祐也にそう言われ周りを見てみると、他のお客さんが私たちを見ていた。

「わかった。」

私は大人しくフルコースのメニューを頼んだ。

店員さんがデザートを運んでくるときにいきなり電気が消えた。

「なに!?停電!?」

私がプチパニックになっていると、ろうそくの火が付けられた。

「デザートでございます。」

店員さんはそう言って、祐也の前だけにデザートを置いた。

もしかして、私のデザートは無し!?

そう思っていると、祐也はデザートの蓋を開けて、床に膝を付けて私を見た。

祐也の掌を見てみると、指輪が入っている箱があった。

「つぼみ、俺と結婚してくれるか?」

もしかして、プロポーズ!?

「祐也!もちろん!」

嬉しくて泣いてしまった私の指に指輪をはめ、祐也は私を抱きしめた。

「一生一緒にいてくれ。」

祐也はそう言って泣いている私の頭を優しく撫でてくれた。

それを見た周りのお客さんたちが拍手をしてくれた。