私は切れた電話をしまい、タクシーに乗って金代組本家に行った。

門をくぐって歩いていくと

「お、お嬢が帰ってきました!」

若衆が大きな声でそう言った。

「ただいま。」

私はそう一言だけ残して足早に家に入って行った。

大きな襖の前で立ち止まり、中にいる人に声をかけた。

「おじい様、つぼみただいま帰ってまいりました。」

「ああ、入ってきなさい。」

私は中に入り、おじい様の前に正座をした。

「そうか、決断したのか。すまないな、普通の高校生として過ごさせてやれなくて。」

おじい様はそう言って申し訳なさそうな表情をした。

「いいんです。母さんが亡くなってしまったのは私のせいですから、せめてもの罪滅ぼしです。」

「つぼみ、そんなことないのよ。あれは私達や金代組の注意が足りなかったせいなんですから。」

おじい様の隣に座っていたおばあ様がそう言った。

「つぼみ。今週中にでも俺はお前に組長という座を譲渡しようと思う。その際にKSグループはわかるな?その社長も兼任してもらうつもりだ。」

「わかりました。私は何も異論はありません。」

私はそう言うとおじい様の瞳を見つめた。

「KSグループの兼任もお前一人で仕事をするのはつらいと思う。だから影乃グループの二男を引き取り、KSグループの副社長になってもらう。」

影乃?もしかして...?

「名前は影乃智也だ。」

影乃先輩ね。だったら私が金代組の次期組長でKSグループの次期社長になることが伊川先輩に知られてしまうんだね。

「...わかりました。あとこれからもう安元の家に戻ることは無いので金代の苗字を使わせていただきます。部屋も以前使っていたところでよろしいですね?」

私はおじい様が頷いたのを見て部屋を出た。