家に帰ってから海人さんはすぐに、会議があるとかで倉庫に向かった。
「さて、お母さんもお父さんもいないし、行くとするか。」
私はいつもの黒羽の格好をして家を出た。
それからみなみさんのお店に行き、またいつものを頼んで会計しようと立ち上がろうとしたときにみなみさんが
「あすにぃがごめんね。つぼみのせいじゃないってわかってるはずなんだけど姉さんのこと、誰よりも溺愛してたから。」
「ううんいいの。母さんが死んだのは私のせいだから。」
私はそう言って、携帯を開いた。
"今から向かいます"
そうラインをしてお金を払った。
黒竜か。名前だけだと緋向の方が悪いことしてそうだけどな。
私は一人で微笑むとフードをかぶって黒竜の倉庫へと歩き出した。
思ったより小さな倉庫だな。
私は持ってきたマスクを着けて中に入った。
「失礼しまぁーす。誰かいますかぁー?」
私は少し甘ったるい声を出して黒竜の奴らが出てくるのを待っていた。
だが、数分たっても出てこない。
もう一度呼びかけてみるか。
「すいま「ここにいるよっ。」
私の声を遮ったのは、ここにいるはずのない楓だった。
もしかして、今日ここに来ること気付かれてた?
「お前らは緋向だな?」
私は先ほどの声とは違い、ドスの利いた低い声で問いかけた。
「ああ、そうだ。俺達のことは知っていたんだな?」
「この世界にいて知らない奴の方が珍しい。それよりなぜお前らがここにいる?」
伊川先輩は私の質問を鼻で笑い、殺気を出した。
「鉈に頼んだら、今日ここに来ることだけはわかったんだ。」
鉈か。思ったよりやるじゃん。でもここで戦うと、戦い方で正体がばれる可能性がある。
だからここでは逃げた方が得策だ。
私はさっと後ろを振り向いて逃げようとしたが、30人ほど下っ端がいて逃げるに逃げられない状況だった。
どうしようか、と迷っているときに背後から伊川先輩が近づいてきて私はそのまま縄で縛られてしまった。
フードとマスクを取られ顔があらわになってしまった。
「つぼみが黒羽だったのか?」
伊川先輩は冷たいまなざしに冷たい口調でそう問いかけてきた。
「はい、そうです。あなた方を騙していたことは謝ります。でも姫になったのは、黒羽としてではなく、安元つぼみとしてでした。ですが、こちらにも事情というものがあるのでもう黒羽としても安元つぼみとしても緋向の仲間になることはできません。短い間でしたがお世話になりました。」
私はそう言って何とか縄を自力で解いて立ち上がった。
明日斗さんに報告しないと。
私は歩きながら携帯を取り出し、明日斗さんにかけた。
「なんだ?電話は掛けてくるなと言っておいたはずだが。」
明日斗さんは冷たくそう言ったが私は気にせず告げた。
「黒羽だと緋向にばれてしまったので、もう黒羽としての仕事をできません。」
「この、役立たずめ。早苗を殺したくせに、仕事もできないと抜かすのか。お前なんか生まれてこなければよかったんだ。」
明日斗さんは冷たく言い捨て、電話を切った。