「遅くなってすいません。直哉さんから連絡が入って。」

直哉さんのことを緋向の幹部はみんな知っている。

直哉さんが私のことを憎んでいるということも薄々気付いているだろう。

母さんの兄弟の中で私を憎んでいないのは唯一みなみさんだけだ。

みなみさんは母さんのことが好きだったはずなのに殺してしまったも同然の私に優しくしてくれる。

「行くぞ。」

先輩はそう言ってバイクに跨った。

私も先輩に貸してもらったヘルメットをかぶり、先輩の後ろに乗った。

「しっかりつかまってろよ。」

先輩はそう言って私の腕をお腹の方にきつくまわした。

自然に先輩に抱きつく形になってしまったが、走り出してしまったので話すことはできなかった。

流れる景色を見ながら先輩の背中が以外にも広く、筋肉質なことに気付いた。

こんなことを考えているなんて私が変態になってしまったようだ。

それからあっという間に家に着いた。

意外にも倉庫から家までは近かったようだ。

バイクから降りると何故か伊川先輩と離れたくないと思った。

それが無意識に行動に出てしまい、歩いて行こうとした先輩の服の裾をつかんでしまっていた。

「どうしたんだ?」

「あっ、すいません。
送ってもらってありがとうございました。」

「いや、いいんだ。俺が言い出したことだからな。」

先輩はそう言って微笑んだ。

「じゃあ、もう行くな。また明日迎えに来る。一緒に学校へ行こう。緋向の奴らも一緒だがな。」