解散した後、幹部室には私と伊川先輩だけが残った。
「私がいるのにこんな大事な話をしてもよかったんですか?」
「ああ、お前はきっと秘密を洩らさないだろうと信用しての行動だ。
もし洩らしたら俺がこの手でお前を殺してやろう。」
伊川先輩はそう言って怪しく微笑んだ。
その格好ですら絵になってしまうので困ったものだ。
「もうそろそろ夕方になる。お前の家族も心配するだろう。今日は俺が送って行く。
海人にはやってもらわないといけないことがある。だから今日は帰れそうにない。」
伊川先輩は伝言を頼むと言って先に降りて行った。
「行くか。」
私が幹部室の扉に手をかけたと同時にラインの通知音が鳴った。
‘仕事だ。明後日までに黒竜の奴らを潰せ。’
母さんの一番上のお兄さんから連絡が入っていた。
明日斗さんは警視庁で働いていて、母さんのことを溺愛していた。
故に母さんを殺したも同然の私のことを一番憎んでいたのも事実だった。
それに現役でおじい様がやっている金代組の跡取りに私が選ばれたこともあって私を特に嫌っていた。
だからこそこういう危ない族つぶしも私にやらしているんだと思う。
私もそれで明日斗さんの気が少しでも楽になるなら私はいくらでも罪滅ぼしをしようと思う。
あんまり遅くなると伊川先輩に不審に思われるので、わかりましたと一言返信して幹部室から出た。