幸せになりたい






私は久しぶりに繁華街へやって来た。

「今日はどこの族かなぁ?」

そう呟いて、フードをかぶった。

繁華街の一角にある昼はカフェ、夜はバーをやっているお店に入っていった。

「久しぶりだね。何か用事があったのかな?」

この店の店主みなみさんはそう言い、私を一番奥の部屋に案内した。

「何を頼むの?」

「いつもので。」

私は短くそう告げ、携帯を見た。

そこにはいつの間にか登録されていた、緋向の幹部達のアドレスが載っていた。

トークのところを開けてみると、2件ほどラインが来ていた。

「今、どこにいるんだ?今日は緋向の下っ端にお前を紹介するって言っただろ。」

その内の1件は伊川先輩からきていた。

「今日は体調が優れないので明日にしてください。」

絵文字もつけずにそう送った。

残りの1件は死んだ母さんの二人の内の一人のお兄さんからだった。

「お待たせ。ココアとザッハトルテね。いつもありがとうございます。」

そう言ってみなみさんは厨房に戻っていった。

私は繁華街で喧嘩をするときは必ずここのザッハトルテとココアを頼む。

ここのは甘党でデザートにうるさい私でも文句なしに美味しいと思える唯一のお店だ。

ここは死んだ母さんの弟のみなみさんがやっているお店だ。

みなみさんは私のせいで母さんが死んだのに責めずにここにはいつ来てもいいよと言ってくれている。

いつか信用できる人が出来たときはここに連れてこよう。そう思っている。

私がザッハトルテを食べ終わった頃に携帯にラインの通知が来た。

"分かった。奴等にそう伝えておく。あとでお前の家に海人と一緒に見舞いにいく。"

そう書いてあった。

私は適当に返信しお金を払って店を出た。

暴走族を潰すのも程々にして今日は早く帰ろう。そう思いながら、ある族の倉庫の前に立った。