翌日。

学校の準備をして、登校。

玄関を開けると…

「お!穂乃花じゃん!おっは〜」

「修司!!おはよ〜」

修司の家からはここがちょうど通り道だからこうして部活がない日はたまに会ったりもする。


「一緒に行こぜい!」

「うん!」

学校まで他愛のない話をしていると、周りからの視線に気づく。


こう見えても修司は背も高く、
俗に言うイケメンという部類に入る人だから、
一緒に歩いていると目立ってしまうのだ。

(まぁ、もう慣れたけどね。)

「あ!!」
そういえばと思い、聞きたかったことを聞くことにした。

「ん?」

「昨日さ、カラオケ来れなかったのって、もしかしてアレ?」

「さっすが穂乃花。ご名答。アレです。」

「また!?最近多いね…」

「そうなんよ〜。ったく継ぐって言ってんだからあと1年待てないのかあの親父殿。」
ハァ……と、隣からため息まで聞こえてきた。


゛アレ゛と言うのは、喧嘩のこと。

喧嘩と言ってもスケールがだいぶ大きい親子喧嘩。


実は修司はこうみえて、お金持ちのお坊ちゃんなのだ。


修司パパは及川グループの社長さん。そして、修司はその跡取り息子。つまり、次期社長なのである。


修司は小さい頃から英才教育を受け、いつもヘラヘラしているが、頭もいいし、運動もできて、、、ホントになんでもできるのだ。


空手なんかは黒帯で大会なんかでもたくさん優勝してるみたいだし、ピアノやバイオリンなんかも弾けてしまう。
その上、英語はもちろん、他の外国語もペラペラ。
テーブルマナーや、色々な作法なども身につけているスーパー高校生だったりもする。


だから、幼稚園時代から中学まで私立の名門校に入っていた。

そんな修司がなぜ公立の高校に通っているのかというと、

どうせ高校卒業したら及川グループを継ぐわけだから、
高校の3年間は青春を謳歌しろとの社長からのお達し。


それなのに、高校1年の後期あたりから会社に関する話題でちょくちょく呼び出されるらしい。

そしてその度にケンカ。


空手の黒帯さんは、なんとケンカも強くてですね、修司パパさんもケンカが強くてですね、それはもう壮大なケンカらしいですよ。


「全く、もう少し待てねーのかよあの父上は!!」

でも、こうして親父殿。とか、父上。とか言ってるあたりが修司らしい。

「だって俺、まだ16よ?高校2年生よ?継げって言われても考えられねーすよ…」

「そうだよね…でも、ほら!パパさんも何か考えがあるのかもしれないし、向き合ってみなよ!」


「うん〜…」

そしてこのことはほとんどの人が知らない。


多分、この高校で知ってる生徒はあたしくらいだと思う。


隣でうなだれてる修司を見ると、おデコにかかっていた前髪が風でフワリと揺れた。


!!!

「修司!おデコ、血出てるよ!!」


「お?まじ?昨日のかさぶた取れちゃったかなー?」

と言って、ベタベタ触ろうとする。


「触んない!ほら、おデコ見して!!悪化するよ!」

ポーチから絆創膏を出して、貼る。

「おー、ありがとうな。」

顔はそれだけだが、よく見ると腕や手にいくつかケガのあとがあった。


「はぁ、これ、喧嘩で?」

「そー、喧嘩の証。パパさん物投げてくるんだもーん。 この!バカ息子〜!とか叫びながら。」

「全く。避けなさい。」

「いや、避けたよ!?かなり。笑 まー、でも、父強し。」

「はぁ、ほどほどにね。」

呆れながら話しているといつの間にか学校に着いていた。