「いやや」


「はい!?」


「いやや、って言うてんねん」


夜。帰宅した鹿目が、ことの次第を説明し終わる前に、ばっさり。

目を覚ましたイケメン君。


仕事に行っている間に、勝手にクローゼットから出して、

着られそうなスゥエットを着たらしい。


「そんなこと言われても。ここには私しか住んでないんだし」


「せやから、ええんやんけ」


「どういうつもり??っていうか、なんで関西弁???どこからきたの???」


「いっぺんに言うな」


ごほん、と咳払いし、胡座をかく。


「名前は、うーん、クマオでええわ。地元の山で暮らしてた。

食いもん探してて罠に掛かったところ助けてくれたんが、あんた」


「はあ…」


「で、昔から仲間内で言い伝えられてる、茄子の花を食べたら

一時的に人間の姿になれる、とかいう話、試してみたらホンマになれて」


足に巻いたタオルを撫でながら、


「そっから山降りて、タオルとあんたの匂いを便りにようやっと

ここまで辿り着いた。っちゅうわけ。関西弁は地元の

人間の言葉と、ここで見たテレビで覚えた」


勝手に、いろいろ物色されている。


「何のために…?」


「そら、恩返しと、惚れたから、嫁にしよ思って」


固まる鹿目。


「はい!?」