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「…お前たちはそこで待機してろ。
合図を送るから、そしたら中へ入れ。」

「はっ!!」







部下たちを屋敷の入り口で待機させ

1人裏に回って中を伺う。






表では物音が大きく聞こえ

見なくともどんな状況か容易に知れた。







…すでに善はここへ着いている。







それを承知の上で
戦場で彼が戦っている間に

自分が椿を助ければ良い。






喜一はそう考えながら

注意深く聞き耳を立てた。







───誰もいない。







敵は全員 善の相手に回っているのだろう。




戦いの最中に

こうして弱い役人がここまで来るはずがないと踏んだのだろうか。








(残念ながら、弱いのは後輩だけだよ。)







善のいた頃から共にやってきた
喜一だけは



まだあの弱い団体の中に

身を置いているのだから──。








(…裏口から下に繋がる階段が見える。)









階段の扉が閉まっていることから

善はまだこの下には行っていないと考えた。






──ということはあの戦場に
きっと椿の姿はないはず。







喜一はそう考えながら

静かに中へと足を踏み入れた。








…少し離れた所で

銃声が激しく聞こえる。