「……お前か、椿を拉致したのは。」
「クククッ……そうだ。
あの女を捕まえて下に放り込んだ。」
そう笑いながら
善に挑発的な言葉を向けたのは
この計画の主犯である
あの男だった。
暴れた様子で
返り血をビッチリ浴びた善の姿を見て
愉快そうに笑みを深める。
───ほらな、やっぱり来た。
あの女を拉致して
こんなに荒れ狂うなんてな、と
呆れ混じりにフッと笑う。
それに対して
表情をピクリとも変えない善。
薄気味悪いほどに
口角を緩く上げたまま
右手を刀の鞘に持っていく。
「…ククッ…目的は俺の首か?」
「ご名答。
…この前の落とし前、付けさせてもらう。」
男はそう言うと
指をパチッ---と鳴らして合図を送った。
すると
どこから湧いたのか
ザッと20人はいる刺客の仲間が
善を取り囲む。
(……あちこちに隠れてやがったか。)
通りでこんな奥まで
誰にも会わずに来れたわけだ…
あんなにする人の気配の中で。
善はそう納得しながら
また妖しく、口角を上げる。
「……そうやって
笑っていられるのも今のうちだぞ。」
「ククッ……どうだかなァ?」
---お互いにそう交わしたと同時に
腰にある自分の武器に
手をかけた。

