不器用な愛を刻む







その後の有り様は酷かった。







部屋の中は血まみれ---。



数人危険を察知して逃げ出したが

最後に出た俺が見た奴の顔は






──終始 不敵な笑みを浮かべていた。









(っ…狂った顔してやがる…!)









そう思い

一旦身を引こうとその場を去ったが




組織としての痛手が大きく

恨みは募っていた。






---刺客としてのプライドもあった。






数人でかかった時に
傷をつけられたのも確認していたため


これはもしかすると---と思った。








(…それが何だ、ありゃあ……。)








こんなにも奴を恨んで
殺す作戦を練って

遠目から監視もしていたのに。






その時に見たのは





あの時とはまるで別人の

女にうつつを抜かす---奴の姿。








…これは使えると思った。





あの『鬼』が大事に接している

この女を捕らえれば---。










…そう思って出たのが

この作戦だった。








(……あんなバケモノを、あの女も愛していたとは…。)








あの雰囲気と

妖しい見た目を見て



あの女は何も思わないのだろうか。







そこに惹かれたと言ったら


あの女もとんだ
変わり者だと思うしかないが──。












『あの方は……優しくて素敵な方です。』











「………。」








あんな一途そうな目で

あの男を庇うあの女を見て






何だか少し……変な気持ちになった。









(……まぁこれも)







あと数刻で考えることもなくなるだろう。







そう思いながら


刺客の男は無意識にフッと笑みを浮かべて



その場を去って行った。