「だからって…俺を騙してあそこに差し向けるなんざァ、お役人として顔見せできねェ位卑怯さだぜ?」
「……じゃあ真っ向から申し出せば
君は引き受けてくれたのかね?」
---善がそう責め立てると
青戸が冷静な声で、そう返した。
その言葉に善は笑みを止めて
煙菅を吸って、フー…と煙吐いた。
「……いいや断る。
…俺ァもう"ここ"の人間じゃねェ。
そもそも…罪人を捕まえるなんざ、本来お前らの仕事だろうが。」
何のための警察なんだ?あ?
と
善は青戸を睨みながら
唸るようにそう吐き捨てる。
その善の返事に
青戸は何も言えず
言葉を詰まらせ黙ってしまった。
---時代の移り変わりと共に
政府も警察も体制を大幅に変化し、
昔とはだいぶ違ったものになっていた。
それに伴ってなのか
武器に頼る正義感ばかり溢れる
男共の集いとなったこの役所に
善も喜一も、青戸でさえも
力の弱さを認めざる得なかったのだ。

